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放馬した馬はどうやって捕まえる?

また牧夫時代の話。
先日紹介した寝違えと並んで、慌てさせられるのが放馬だ。
※寝違え http://itamiharuo.blog3.fc2.com/blog-entry-19.html

通常、馬房や放牧場の出入り口は馬栓棒(ませんぼう)という横木でふさがれていて、馬が逃げ出せないようになっている。
しかし、自分が勤めていた牧場の馬栓棒は、下から持ち上げると外れる仕組みになっており、ときどき馬が首で馬栓棒を持ち上げ、脱走することがあった。
(たぶんタテガミあたりが痒くなり、馬栓棒にこすりつけて掻いた拍子に外れたのだと思う)

競馬場でも、たまに放馬を見かけるが、なにしろ逃げ足が早い馬のこと、つかまえるのは大変だと思うでしょう?
でも、興奮状態にある競馬場とは違い、のんびりとした牧場でのこと。
ほとんどの馬は、そこらに生えている雑草を引っこ抜いて見せると「メシ?」と近づいてくるので、案外カンタンに捕まえることができる。

とはいっても、いつの間にか脱走して、好き勝手に闊歩している馬を不意に見ると、本当にびっくりする。
人間の驚きをよそに、他の馬が、うらやましそうに逃げた馬を見ていたのが印象的だった。
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馬の寝違え

競馬新聞を読んでいると、たまーに「馬房で寝違えて脚を痛めた」などというコメントを見るが、この「寝違え」は人間とはちょっと意味が違う。

そもそも馬は立ったまま眠るが、奴らだってゴロゴロしたいときもある。
馬房で横になっている姿を見るのは、そう珍しいことではないが、そのとき寝返りを打って、馬房の隅でフリーズしてしまうのが寝違えだ。

狭い馬房の壁の近くで寝返りを打つと、下図のように壁に脚がつかえて、起き上がれなくなる。

nechigai2.jpg
ときどき、仰向けの状態で固まっていることもあり、なかなかのマヌケな姿に、つい吹き出してしまう。
…が、危険なのには違いがないので、すみやかに対処しなくてはならない。

こういう状態になると、馬は自力で起き上がれないので、人間が馬房の真ん中あたりまで引っ張ってやる必要がある。

牧夫時代は夜中でも早朝でも、寝違えた馬が発見されると直ちに招集され、3人くらいで引っぱり起こしたものだ。
不自然な体勢から起き上がるときに、馬が怪我をすることもあるので、かなり気を遣う。

人間の寝違えは首や肩の筋が固まる…というイメージがあるが、馬の寝違えも結構大変なのだ。

飼い葉が変われば馬も変わる?

牧夫時代は、夏は朝4時、冬は朝6時に起きて、馬に飼い葉をつけていた。
ひとくちに飼い葉といっても、トレーニングセンターと休養施設では、当然内容が異なる。
休養施設の飼い葉の主成分は、牧草を乾燥させてサイコロ状に固めた「ヘイキューブ」というものだった。
5センチ角くらいの大きさで、石のように堅い。

はじめて見たときは「これが餌か!?」とびっくりしたが、馬はボリボリとうまそうに食っている。
馬の噛む力は予想以上に強く、腕や肩を齧られると青アザができるほど。

しかし、なかには柔らかいものが好みの馬もいるようで、水桶にヘイキューブを放り込んで、ふやけさせてから食べる器用な奴もいた。
もちろん、すぐに水桶がドロドロになるので、掃除するのが大変だ。

飼い葉には、ふすま(糠)や塩も混ぜられるが、ときどき燕麦(エンバク)も加える。
燕麦は栄養たっぷりなので、飼い葉に混ぜた次の日は馬が元気になりすぎて困った。
毎朝、馬を厩から出して放牧するのだが、燕麦を食べさせたときは大暴れすることがあり、油断しているとヒドい目にあう。

食べ物ひとつでここまで変わるのだから、競馬の予想ファクターに「飼い葉」という要素があってもいいのかもしれない。

ヘーホークで寝ワラを干すと…

3年間の牧夫生活は、肉体的にかなりハードだった。
牧夫になる前はモヤシみたいな体型だったが、半年も働ければ、だいぶ筋肉がついてくる。
なかでも一番鍛えられたのは、ひょっとすると握力かもしれない。

牧夫には馬を手入れしたり、運動させたりと、いろいろな仕事があるが、時間的な割合がもっとも大きいのは、寝ワラをあげる作業だ。
ボロ(馬糞)まみれになった寝ワラを、ヘーホークで引っ掻き回し、まだ痛んでないワラを干す…という作業だが、なにしろ馬の頭数が多いので、やってもやってもキリがない。
ちなみにヘーホークとは、長い柄のついた3本爪の農機具で、牧夫の必須アイテム。
fork.jpg
ヘーホーク自体もずっしりとした重みがあるが、濡れた寝ワラを引っ掛けると、かなり力を入れないと持ち上がらない。

牧場で働きはじめた初日、一通り仕事が終わったころには、腕はパンパン、膝はガクガクという有様だった。
この先やっていけるか不安になったが、その日は深く考える余裕もなく、倒れ込むように眠った。

次の日、目が覚めてびっくりした。
ヘーホークを握りすぎたせいか、指がガチョーンの形のまま固まって動かないのだ。

右手で左手の指をほぐし、左手で右手の指をほぐしと、ズゴックになったような気分でマッサージをして、ようやく指が動くようになった。
その後しばらくは、これが毎朝の儀式になった。

牧夫時代の末期には握力がかなり発達し、腕相撲をすればイイ線だったと思うが、赤ペンより重いものを持たないライター生活の現在、小学生に勝つ自信もない。

地獄の馬運車

むかし勤めていた競走馬の休養施設には、恐ろしい馬運車があった。
馬運車というと、普通は競馬場の近くでよく見かける大型バスのような車を想像すると思う。

自分もそうだった。
…が、その休養施設で馬運車をはじめて見たときは腰を抜かした。

下の図を見てもらえればわかると思うが、単なる2トン車の荷台に、馬と一緒に人間が乗り込むという代物。

baunsya.jpg


人間と馬との間には、いちおう仕切りとして鉄パイプが横に1本通っているが(赤い丸部分)、自分の身を守るのはこれだけ。
目と鼻の先にあるトレーニングセンターに運ぶだけなので、立派な馬運車は必要ないのだが、ちょっと気性のうるさい馬と同乗したときなどは、本気で恐かった。
(実際には引き手を壁に繋ぐので、ある程度は安定する…)

馬の顔が荷台から覗くので、後続車に注目されて結構はずかしかったりもする。
馬を扱う仕事は、いろいろ意味で刺激的だ。
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